<明日への希望>
 
 
春。ある学校の放課後の教室の様子。女Aは友達と話しています。教室の隅には、女Bが本を読んでいます。
 
1 今日学校早く終わったな。
2 そうだね。暇だね。
1 どこかに遊びに行く?
3 うん。いいね。どこにしようか
2 じゃあゲーセンは?
1 いーけど、金そんなにもってないんだけど
3 じゃあショッピングセンターは?
2 えー。別にいいけどさー・・
A じゃあカラオケにしたら?今日半額ってチラシに書いてあったからさぁ。いいんじゃない?
1 カラオケか・・・。いいじゃん。カラオケに決定!文句ある奴いるか?
A・2・3 ありませーん。
1 じゃカラオケに行くか
2・3 うん
A あっ。今日部活あること忘れてた。休みは昨日までなんだった。
1 そうなんだ
A ということで部活行かないといけないんだ
1 いいけど・・・。なんでそんなにがんばってるんだ。確かバレー部だったっけ?帰宅部にしたら。遊べるし。
A うんそうなんだけど・・・。私はバレーをしたいの。だって私の出身中バレーが強くて全国まで行ったの。で、高校のバレー部顧問にスカウトされたの。
2 へぇ〜すごいじゃん。女Aは、レギュラーのために努力したんでしょ?
A うん。努力した。苦しくても頑張れたのは、バレーが好きだったから。
3 そっか。けど、がんばりすぎると身体によくないよ。
A 分かってるけど・・・。
1 こらこら女Aが困ってるじゃない。それに女A。部活行かなくていいの?
A ああやばい。もう行かなくちゃ。それじゃまた明日ね。
1 ああまた明日な
2・3 バイバイ
 
女Aは教室を走って出て行く。
 
1 あいつ、私達よりも部活の方が大事なのか?
2 そうなんじゃない。バレーのこと自慢してたしさぁ
3 そんなことないよ。女Aは本当にがんばっているのだから
1 けど・・・。まぁいっか。私達もそろそろ行こうか。
2 うん。そうだね。早く行こうよ
1・3 はいはい
 
女1・2・3は教室を出て行った。女Bは今の会話を気にせずに本を読んでいる。しばらくして、女Aが忘れ物をとりに教室に入ってきた。
女Aの机は女Bの前にある。女Aは自分の机に近づいて忘れ物を探した。
 
A あ、あった。これないと予習できないし・・・。これで安心。
B ・・・・・・・・・。
A (女Bの方を見て)ねぇさっきから何をしているの?
B (女Aの方を一回見る)・・・・・・・・。
A 本読んでるの?何の本なの?
B (本の表紙を女Aに見えるように見せる)・・・・・。
A アンデルセン?おもしろいのそれ。
B (うなずく)・・・・・・。
A そうなんだ。今度読んでみようかな?あぁ早く戻らなきゃ怒られる!じゃ電気とか消しておいてね。じゃ
B ・・・・・・・・。
 
女Aは教室を出る。女Bは女Aが出て行った後、帰る準備をする。女Bは教室をでた。
次の日(暗転はしないで)
教室には女1・2・3が仲良くしゃべっている。そこに女Aが来る。
 
1 昨日楽しかったな。カラオケ。
2 そうね。私の歌声は綺麗だったでしょ?
3 えーそんなことなかったよ〜。それをいうなら私のほうが上手だったよ。
A おはよう。何話してるの?
2 昨日のカラオケのことよ。
A ああ、そうなんだ。(ちょっと落ち込む)それより英語の予習してきた?
1 いいや。全然してねぇー。
3 カラオケで盛り上がってたから、予習のこと忘れてたわ
A じゃ私の見せてあげる
1 別にいいよ。なんとなくわかるし・・・。
2 私も。今から予習するからいい。
3 じゃ私は借りようかなぁ
A はい(ノートを女3に渡す)
1 今から勉強タイムかぁ。まぁどうせもうチャイムなるから席に戻るか
2 私も戻る。予習しないとね
3 女A。ノート借りるわね。あとでかえすね。
 
女1・2・3は自分の席に戻った。そして女Aだけ取り残される。女Aも自分の席に戻る。チャイムがなった。授業が始まった。女Aは外を見ながら考えていた。
 
A (心の中)あれが本当の友達なのか?私はあの輪に入れない。入ってもやっていける自信がない。どうしよう。バレーをやめればいいの?
       バレーをやめればあの輪に入れるの?けど、バレーはやめたくない。バレーは私にとって唯一誇れるものだから。バレーをとったら私に何が残るの?
       一体どうしたらいいの?
3 ノートありがとう
A あ。うん。別にいいよ。(ちょっと戸惑いながら)
3 どうしたの?
A えっ。な、なんでもないよ
3 そう。それならよかった
 
女3は去っていき女1・2のところへ行った。女Aは外を見て考えた。
 
A (心の中)私は本当は何がしたいのかなぁ。友達作り?勉強?バレー?分からなくなってきた。私の心の中では決まっているのかもしれない。
       けど、友達から見たら私は・・・。友達のこと全然わかんない。どうすればいいの?
 
物憂げそうにしている女A。周りには誰もいない。放課後だった。部活の時間はすぎて、女Aは部活に行かなかった。女Aは廊下を歩いていたら副担任と会った。
 
副 おい。女A
A はい?
副 今暇なのか?
A あ、はい
副 じゃこれ図書室に返しておいてくれないか?先生今忙しくて・・・・。
A 分かりました
副 じゃよろしくな
 
女Aは副担任の後姿を見ていた。
 
A さて、図書室にいくかな
 
女Aは図書室に向かった。そこで見たことのある人がいた。女Bだった。
 
A 女Bさん。何しているの?
B ・・・・・・・・。
A ねぇ〜ってば〜
B ・・・・・・。はぁ部活(仕方なくそうに答える)
A 部活。えっと女Bさんは何部?
B ・・・・・・。文芸部。
A へぇ〜文芸部かぁ。そういえば他の人達はどうしたの?
B ・・・・・・。誰も来ない。
A それであなた1人でやってるの?
B ・・・・・・。(うなずく)
A どうして女Bさんは、どうしてしゃべらないの?話すのが苦手なの?
B ・・・・・・・。(うなずく)
A 私もね。小学校、中学校のとき、話すのが苦手だったの
B ・・・・・・・・・。(信じられないと言う顔をする)
A 本当よ。私は昔からバレーをやっていた。周りのことよりもバレーの方が大事だった。だから、友達と呼べるような存在はいない。1人でずっといた。
  バレーをやめるのは出来ないと思う。バレーも大事、友達も大事。私は高校ではこれを両立させたいから、今をがんばっているの。けど、それもちょっと
  上手くいかなくなってきた・・・。
B ・・・・・・・・。私も、私もね。ずっと1人でいた。人と話すのが苦手なの。けど友達はいたけど、本当の友達じゃなかった。私は友達に裏切られたの。
  そしていじめられた。もう誰も信じられなくなった。だから、私はあきらめた。誰も信じない。友達も作らない。だからもう近づかないで。
A そんなことがあったんだ。苦しかったね。私も苦しかった。私達にたような境遇があったんだね。
B ・・・・・・・・・。
A 私と友達になってくれないかなぁ
B ・・・・・・・・・・。
A 私があなたのことを理解してあげるから。友達になろう。本当の・・・・。ね?
B うん・・・・・。(ちょっと迷ってから)ありがとう。
A じゃこれから友達。よろしくね。
B うん。
A あ、もうこんな時間。玄関しまっちゃう。女B。早く早く。
B 今行く。
 
女A・B仲良く去っていく。帰り道
 
A まず、友達つくりの基本は話しかけることかな。ねぇ私達同じゼロからスタート同士だよね。競争しない?友達作りの・・・・。
B ・・・・・・。わかった。私頑張ってみる。じゃ私こっちだからじゃ明日ね。
A うん。バイバイ。明日から頑張ろうね
 
次の日。女1・2・3は仲良くしゃべっていた。女Aが来る。
 
A おはよう
1 あ、おはよう
2・3 おはよう
A ねぇ今日部活久しぶりに休みになったの。どこか遊びに行かない?
1 う〜ん。まぁいっか。どこいく。
3 じゃ遊園地!
2 いけるわけないでしょ
3 冗談だよぉ〜
A・1・2 (笑う)アハハハハ
2 あ、もう授業始まる。じゃ休み時間に決めよう?
A・1・3 賛成
A あ、先生が来た。後でね〜
 
皆自分の席に戻る。女Aも戻る
 
A あ、女Bおはよう
B お、おはよう
A がんばってる?(後ろの女Bの方へ向く)
B う、うん
A そう、よかった。私も頑張っているよ。今を
B ・・・・・・・。
A (不思議そうに見て、前を向く)
 
しばらくしてチャイムがなる。女Aは女1・2・3のところへ行く
 
A さっきの話のことなんだけど、どこに行く
1 カラオケ?
2 けど前行ったしさぁ
3 じゃゲーセンいこうよ。女Aと初めて遊んだ記念にプリクラとろうよ
1 おっいいな。女Aとプリクラとろうか
2 じゃゲーセンじゃなくて、ショッピングセンターに行こうよ。ゲーセンもあるし、ショッピングを楽しもうよ
A いいねぇ。じゃショッピングセンターで決定ね
2 じゃ放課後にね。絶対だよ
A うん。約束ね
 
女Bが女Aを見ている。そのうちチャイムがなる。皆席に戻って授業を受ける。女Bはいつまでも女Aを見ていた。
女Bは不安になった
 
B (心の中)どうして私はこんなんなんだろう。女Aのように変わりたい。他の子に話しかけることがこんなに難しいと思わなかった。
       話しかけても無視された。どうして私だけ?私の何がいけないの?私の何が。女Aに、女Aに聞いてみよう
 
放課後
 
B ねぇ女Aちょっと相談があるんだけど
A あ、ごめん、予定あるから無理。また今度でいい?
1 おい女A、行くよ
A あ、はーい。ごめんね。今度聞くから、じゃまた明日。
 
女Aは女1・2・3とともに出て行く。女Bだけ教室にいる。
 
B 全然私のこと理解してないじゃない。本当の友達なら、私を認めてよ、理解してよ。私はなんなの?あなたの友達?私は真剣に悩んでるの?
  答えてよ女A!
 
女Bは泣きそうになり、かばんを持って走って帰っていった
次の日が来た。女Aは早めに登校してきた。女Bがいた
 
A おはよう
B ・・・・・。
A ?どうしたの?
B 別に・・・・。
A 昨日楽しかったよ。やっぱり友達っていいね
B ・・・・・・。
A 女B?
B 放課後話したいことがあるの
A えーけど、今日部活あるしなぁ・・・・。明後日じゃ駄目かな?
B 今日がいいの
A うーん(考え込む)
B お願い
A うーん(まだ考えている)
B 昨日相談に乗ってくれなかったじゃない
A そうだけど・・・。用事があったの。とても大事な!仕方ないじゃない。それに今日も・・・。だからまた今度ね
B また今度、また今度ってまたそれを繰り返すの?別に今日でもいいじゃない。友達よりも部活の方が大事なの?
A そういうわけじゃないけど・・・。・・・・・・。じゃ放課後10分間だけだよ
B 10分・・・。短いよ。もうちょっと・・・。
A 10分!友達も部活も大事なの。私今頑張ってるの
B わかってるけど・・・
A じゃ今日のことはなかったことに・・・。
B まって、じゃいいから。10分でいいから
A じゃ放課後
B う、うん
 
女Aは女1・2・3が来たことに気付き、そちらの方へ行った。女Bは女Aを見続けていた。そしていつの間にか放課後になった。
 
A で、相談って何?部活行かないと行けないから、早くしてよね
B あ、あのねぇ・・・
A 何?はっきりいってよ
B あのね。私達、本当に友達なの?
A うん、そうだよ。友達じゃない私達。違うの?
B そうじゃない。私のこと本当に理解してくれるの?
A 理解してるつもりだけど・・・。
B 全然理解してないよ。理解してくれないし、私を友達としても認めてくれてないじゃない?
A そ、そんなことはない。・・・・・。
B じゃなんで友達なら相談にのってくれないの?私が真剣に悩んでるときに・・・・。なんで
A それは、大事な用事が・・・
B 用事って友達と遊ぶこと?
A そ、そうよ。私にとっては大切なことなの?
B じゃ私でもいいでしょ?女1さんや女2さんや女3さんは友達で私は何なの?
A と、とも・・・だち・・・。(弱弱しく)
B 私は理解してくれなくてもいいの。私はただ、あなたに友達だと認めて欲しかったの
A ・・・・・・・。
B 理解してくれることと認めてもらうことは全然違う。私にとってそこが一番大切なことなの
A ・・・・・・・・。
B ねぇなんでなにもしゃべってくれないの?
A ・・・・・・・・。
B 私も頑張ったんだよ。頑張ったけど・・・。友達はできなかった。話しかけることは出来たけど、話が続かなかった。ねぇ、どうすればいいの?
  私、こんなことは初めてなの?何したらいいのか分からない。ねぇどうすればいいの?
A ・・・・・・・・。(何を言ったらいいかわからない)
B これじゃはじめて話しかけてくれたときと逆じゃない。女Aは今が大切なの?
A ・・・・・。(うなずく)
B そう。私達、本当の友達同士じゃなかったんだね。せっかく女Aと友達になれた思ったのに・・・。また裏切られた。私のことはどうでも良かったんでしょ!
A そんなことはないよ。私は・・・。
B もういい。もう私のことはほっといて。もう私に近づかないで。
 
女Bはかばんを持って入り口付近で
 
B さようなら
 
女Bは走って去っていった。女Aは呆然と立っていた。
 
A ・・・・。ごめん。ごめんね。気付いてあげられなくて・・・。
 
周りには誰もいない。女Aはとぼとぼと歩いて教室を去った
暗転
下手にBがたっている
 
B 私は私の感情を女Aにぶつけて、酷いことを言ってしまった。私だって悪かったところがあったのに・・・。私は女Aに・・・。初めての友達だったのに。
  あやまりたい。女Aにあやまりたい。けどできない。もうできないよ。どうすればいいの?もう女Aのことはあきらめる?そうすれば私は楽になるかも。
  1人はもう慣れているわ。そうよ。女Aとあったことを忘れればいいのよ。もう友達なんて作らない。友達なんていらない。(間)もういらない 
 
女B、無言のまま舞台から立ち去る。上手の方から女Aが来て、止まって立つ。
 
A 私は女Bに酷いことをしてしまった。今は後悔している。女Bとまた友達になりたい。あやまって話をしたい。あやまりたい。けど、できない。
  女Bに近づかないでっていわれた。もう私とは友達じゃないのかな?本当に?私だけ幸せになっていいの?女Bは幸せ?ただ私は皆と楽しく生活したかった
  だけなのかもしれない。女Bだれ幸せになれない。幸せになって欲しい。私は女Bのことばかり考えてる。もうほっといてほしいの?それなら私はあなたの
  幸せと信じて、あなたのことはほっとくわ。私は陰からあなたを見守る。決めた。女Bを見守り続ける。
 
女A、舞台から去る。
 
次の日、女Bはすでに座っている。女Aが女1・2・3のところまでやってきた。
 
A おはよう
1・2・3 おはよう
A 今日の体育何やるのかなぁ
1 体育?3時間目だっけ?
2 そうそう
3 あっ私は体育委員だから聞いてこなくちゃ。
 
女3走って出て行く
 
A 大変そう
1 体育委員になったあいつが悪い。
2 けど、女3は自分からではなく、先生が指名したんだよ。かわいそうに・・・。
A 私かばん置いてくるね
2 うん。早く戻ってきてね
 
女Aは自分の席に近づく。そして、女Bと目が合った。
 
A ・・・・・・・。
B ・・・・・・・・・・。
 
お互い目が合ったまま・・・。
 
終わり