無題
 
    (真ん中にベンチ。花が真ん中に立っていて)
 
鈴 私は櫻井鈴。歳は19歳、英米語学科に入っている大学生。好きな食べ物は
  牛乳プリン。コーヒー牛乳プリンは邪道と思っている。ごくありふれた大学
  生であるっ。最近の悩みは2つあり1つは朝起きると私の髪が寝癖でスーパ
  ーサイヤ人になっている事だ。しかもいうことをきかない。最悪だ。まぁ、
  それはいいとして・・・イヤイヤよくない。私にとっては死活問題だ。まさ
  に生きるか死ぬかだ。・・・・・長くなりそうなので置いといてもう1つの
  悩みを言おう。それは、将来の事だ。
 
    (純が走って来て)
 
純 おっす♪花。何ブツブツ言ってんの?
 
    (純ストップ)
 
鈴 この人は井上純。中学校から仲のいい男友達。私と違う大学で将来は公務員
  になりたいくせに尊敬している人は何故か「ベル」だ。ハムスターが好きで
  、飼いたいと思っているらしい。名前は「肉」と名付けるつもりらしい。い
  つか喰ってしまわないか心配だ。・・・そんなこんなで、ちょっと変わって
  いる友達だ。
 
    (また動きだし、2人ベンチに座る)
 
鈴 よ。純。
純 何?話って。こんな公園に呼び出して。あ、分かった!オレとやっと付き合
  ってくれるんだな。
鈴 いや、ちがうよ(即答)
    
    (純、落ち込む)
 
鈴 進路についてだよ。
純 (立ち直って)ああ、大学入ったのに決まってないの?で、鈴は何になりた
  いのさ?
鈴 ・・・獣医・・・です。
純 はぁっ!?えっ?何で!?
鈴 だってさ、高校の時進路決まってなくて、英語が得意だったから親に決めら
  れた所に入ったんっだけど、やっぱり嫌で・・・
純 で、何で獣医になりたいのさ?
鈴 好きになったのよ・・・。
 
    (純、驚いて鈴を揺さぶる)
 
純 だ、誰だ!!そいつは!?鈴が好きになったのは誰だ!!誰なんだぁああ!鈴
 プ・・・プレイリードッグ・・・。
純 そ、そうか、あのつぶらな瞳で鈴を誘惑したんだなぁ!!?・・・・って、
  はい?
鈴 いや、だからあプレイリードッグ。前にドキュメンタリーの番組を見たら、
  何かすっごく感動して・・・。(恥ずかしそうに)・・・で、動物関係の仕
  事がしたいと思って。
純 でも鈴、お前今の大学どうするんだよ?今更辞めんのか?
鈴 だからこうやって相談してんじゃん・・・。
純 大学を続かるか、どうかってか?
鈴 うん。
純 う”ーーん。それはなぁ、鈴が決める事だしなぁぁぁ。
鈴 ・・・・うん・・・。
純 ・・・じゃ、聞くけど鈴はどうなんだ?
鈴 え?どうって何が?
純 その仕事、マジでしたいかって事。
    (純立って、真剣に話す)
 
純 オレは将来本当に公務員になりたい。だから、あんなに必死になって勉強し
  て今行ってる大学に入ったんだ。鈴はどうなんだ?本当にやりたい事なのか
  ?
鈴 ・・・・・。
純 本当にやる覚悟はあるのか?
 
      間
 
鈴 ・・・・やりたい。
  親に大学を決められて、そんで将来決められるよりも自分で決めて、自分が
  充実した仕事がしたい。
純 そっか。じゃあ大学はどうする?
鈴 ・・・辞める・・・かな。私の家金持ちじゃないし、辞めて獣医学科がある
  大学探して入ろうかなって。
純 そうするなら、やっぱ親を説得しなきゃな。
鈴 おう。・・・ありがとうね。
純 ん?何が?
鈴 純が言ってくれなくちゃ、決まってなかったかも。純のそういうトコ好きだ
  な。
純 ありがと♪でもさーこういう展開だと、マンガでは恋愛になんない?
鈴 れぇんあいぃぃぃぃ?
    (純、小芝居を始める)
 
純 そうそう、今のセリフのとこ?「純のそういうトコ好きだな(ダミ声)」
   「鈴・・・」そして2人は海辺でおいかっけこをするのだ!
鈴 妄想回路がやばい。
純 そうかー?あ、じゃあさじゃあさ!!花畑でおいかっけこ!
鈴 あんま変わってないやん!そして何故おいかっけこに夢みるっ!
純 少女マンガみたいな事したい!!
鈴 イヤ、せんでいいよそんな事(汗)つーか、今のどきの少女マンガでもしま
  せん。
純 したいのにぃぃぃ。あっ、そうだ思い出した。あのさ、さっき将来の夢の事
  で話したじゃん(照れながら)もう一つ夢があってさ・・オレ、鈴と・・結
  ・・・・
鈴 すみませんでした。(深々とお辞儀)
純 おぉい!最後まで言わして!そしてすみませんでしたって何だよ!!
 
    (鈴立って)
 
鈴 ・・・で、どう説得しようかな。
純 あ。話の転回が早いですね櫻井さん(泣)
 
    (純、気持ちを切り替えて)
 
純 やっぱ義理と人情で突破する?
鈴 義理と人情は違うでしょ。
純 そんじゃ、あれだっ!
鈴 友情、努力、愛でもないよ。
 
    (純、ちょっとへこむ。ひるまず)
 
純 愛は大切だぞっ!
鈴 うん。わかった、わかった。(テキトー)
 
    (純、ついに体育座り)
 
鈴 ちょっと純。もうちょっと真面目に考えてよ。
純 真面目っていわれてもなぁ・・・だってなお前、入学して半年くらいしかた
  ってないのに、辞めて違う大学に入る奴なんて、そうそうに居ないぞっ!な
  んて説得すりゃいいんだ。
鈴 う”っ。
純 それに、鈴んとこのお父さん厳しいらしいじゃねぇか。会った事ないけど。鈴
 う”う”っ。
 
    (鈴、撃沈)
    (鈴、うらめしそうに座ったまま)
 
鈴 泣いちゃうぞぉぉ(泣)
純 泣くならオレのこの胸で!!
 
    短い間
鈴 すみませんでした。(深々と頭を下げる)
純 ・・・そんなにオレの事キライか(泣)
 
    (鈴、ベンチにゆっくりと座って)
 
鈴 おとうさん、反対するかなぁ・・・。
純 多分反対するだろうね。ま、でも反対する気持ちは分かるけどね。
鈴 何で?
 
    (純、ベンチに座って)
 
純 だってさ、子どもは迷惑しれんけど、親は子どもに絶対幸せになってほしい
  んだよ。いいとこ就職して、お金をたくさん貰ってさ、そんでいつか結婚し
  て・・・そういうえーっと、なんつーか、絶対的な幸せ?そういうのを手に
  入れて欲しいんだよ。子どもは可愛いからまぁ、人によるけど。
鈴 人によるって?
純 絶対的な幸せを手に入れても、本人が幸せだと思わなきゃ幸せじゃないって
  こと。
鈴 ・・・・やだ。
純 はっ?
鈴 いつもの純じゃない!!いつも純はおバカなのに、そんな爽やかに(純のマ
  ネして)「幸せじゃないってこと☆」なんて言わなーい。
純 ・・・・。そろそろ泣いていい?(泣)(すでに半泣き)
鈴 あっ!で、話がズレてるじゃん。で、どう説得するかって話よ。
純 小芝居するのはどう?
鈴 小芝居?
 
    (純、急に立ち上がって)
 
純 言葉でダメなら心で伝えろ!君のハートを掴んではなさない(客席の人達を
  指さして)キャッチ&リリース作戦だ〜
鈴 ・・・あ、作戦名なんだ。つーかキャッチ(掴んで)してリリース(はなす)
  するなよ。
純 うむっ。むかーし、むかーしの事じゃった。俳優と脚本家がどっちがお客を
  させているか喫茶店で言い争いをしていたそうな。そして俳優は「言葉で人
  を感動させられる!」と言い、メニューを大声で読み始めたそうな。最後の
  喫茶店のおいしくて人気でちょっと町では有名で・・・以下省略。
  その喫茶店では一番高い1200円のDX弁当の名を読みあげた時、周りの
  客から拍手喝采がおこり、涙を流すものもおったそうじゃ。・・・って事よ
  言葉よりハートよ、ハート(胸に手をあてる)
鈴 マジでか!?
純 うん。この前先生が話してた。
鈴 でも、小芝居して通じるのか〜〜?
純 芝居ならまかせろ!高校の時、演劇部で大道具担当してたんだ〜。
    (ちょっと下手の方に行きながら)
鈴 あ。それ全然関係ないね。
 
    (鈴、座って待っている。純は下手で考えている。)
 
     間
 
純 出来た。かなり即席だけど。これでハートを動かせる?かも!
鈴 疑問形で答えるなよ!
純 まぁ、そう言わずに聞いてくださいな。
 
    (説明しているフリ、2人とも下手のほうに向いている)
 
     短い間
鈴 そ、それで大丈夫なの?
純 練習すれば様になるって。日々精進するのみだっての!それで完成したら、
  鈴のお父さんに見せて感動してもらうスンポーよ。
鈴 うう。お父さんごめんなさい。だます気はないんです。あ、いやいやだます
  んだけど。悪気はないんです。うまくハートをキャッチされてください。
純 ちょっと、練習してみる?
鈴 え!?ここで、恥ずかしいよ!
純 コラコラ鈴。大学のサークルの演劇は日常茶飯事だぞV
鈴 ・・・・。
純 じゃあやってみるか。「お父さん」って呼びかけるところから。
 
    (上手から父親がやってくる。2人とも気付かない)
 
純 はい、せーのっ
 
    (父親、2人の後ろにいる)
 
鈴 お父さん(棒読み)
父 なぁに?
 
    (おどろく2人)
 
鈴 わーー!出たー!おとなしく成仏してくださーい!!
父 勝手に殺すな!
鈴 お、お、お、お、お父さん!?何故ここに!?
 
    (あせる鈴)
 
父 ああ。今日は早く終わってな、公園から鈴の声が聞こえたから来てみたんだ鈴
 そ、そうなんだ。あーどうしよ純!話聞かれてたかも、純、ねぇ純。
 
    (純は立ちつくしている)
 
父 おい鈴、そいつは誰だ?まさかっっ彼氏!!?
 
    (鈴、気が動揺していて)
 
鈴 ええ!?えっ、あっえーっと、違う・・・・
 
    (純、父の手を取り)
 
純 (爽やかに)ハイ☆そうです。ボクは井上純です。19歳で公務員を目指し
  てます。好きなものはショートケーキ、嫌いなものはラッキョ。趣味は山の
  ぼりとどしゃぶりの雨の中濡れている仔猫を助けることです。あと、好きな
  言葉は・・・・正義です。
父 は、はぁ・・・
純 鈴さんの父さんですよね。お付き合いを認めて下さい。つーか、結婚してい
  いですか?
鈴 うぉいっ!!
父 あ。いいよ。
鈴 軽っ!!
 
    (純を突き飛ばして)
 
鈴 お父さん、騙されてるよ!1000%騙されてるよ!
父 いやー、彼はすごいね。(笑顔)だって、彼どしゃぶりの雨の中濡れている
  仔猫を助けることが趣味だって
鈴 うっ。たしかに。色んな意味でたしかにすごい!!
純 (小声で)おい鈴!!ここは練習の成果でアレをやるんだ!
鈴 成果って1行しかやってない!!
純 今がチャンスだー。行けーーー!
 
    (純、鈴の背中を押す)
 
鈴 お父さん。(棒読み)
父 何だ?
鈴 ワタシ、トテモトテモドウブツスキネー(棒読み)
父 何でお前、日本語覚えたての外人風なんだ
鈴 ドウブツトイルトココロナゴムヨ(棒読み)
父 ・・・何がしたいんだ?(汗)
 
     間
 
鈴 お父さん、ちょっと待ってね。
 
    (純のところに行き)
 
鈴 ・・・なんだこの敗北感は・・・。
純 頑張れ!鈴!!相手は確実にダメージをくらっている!
鈴 どっちかつーと、私の方がダメージをくらったわ。
父 どうしたんだ?
 
    (父が近づいて来る)
 
純 あ、いや、その・・・
鈴 やっぱり、ちゃんと言うよ。
純 えっ!?
父 ?
鈴 お父さん、私さ・・・
父 さっきから何だ変な奴だな(笑)
鈴 進路の事なんだけど、
父 どうした急に?そういえば聞いてなかったな、どんな仕事につきたいんだ?鈴
 ・・・・・
父 どうした?
鈴 ・・・・・獣医・・・。
父 は?冗談か?
鈴 私、獣医になりたい。今の大学辞めて、獣医の学科がある大学に行きたい。
父 何を言ってるんだ?
鈴 だって本当は行きたくなかった。大学行けっていうからズルズル引きずられ
  て入ったけど。
父 今さら何を・・・
 
    (純が入って来て)
 
純 お願いします。鈴、高校の時、将来もやりたい事も全然みつからなくて、や
  っと見つけた夢なんです。
父 ・・・・・。
鈴 お願いします。
父 ・・・ダメだ。
純 そんな・・・。
父 なれるはずがない。お前入った大学もぎりぎりで入ったんだぞ?ましてや獣
  医なんて、無理だな。
鈴 勉強頑張るから!
父 あきらめろ。
鈴 お父さん!
父 ダメなものはダメだ。お前には無理だ。
鈴 ・・・。
純 あのーーっ
父 なんだ?
純 まだ確かめてもいないのに、かたっぱしから拒否することないんじゃないで
  すか?
父 君には関係ないだろ?
純 いちおありますよ。友達ですから。
鈴 そうだよ。挑戦させてよ。
父 無理だ。お前はこのまま大学続けてもらうし、やめさせない。それだけだ。
 
    (父は足早で上手に帰っていく。茫然と見つめている2人)
 
     短い間
 
純 だめだったね・・・
鈴 うん・・・・。
純 頑張ろうよ。これからもねばり強くお願いしようよ。
鈴 ・・・・・うん・・・・。
 
    (純、ストップ。鈴、少し前に出て)
 
鈴 それ以来、お父さんとの関係はとてもギクシャクしたままだ。ちなみにお願
  いはまだ続いている。やっと見つけた夢だ。私はまだ諦めてはいない。
 
                     END