<一年六組一班>
 
4人が調理実習室の椅子居に座っている。
机の上にはホイコーロー(少々こげた)とご飯ともやしとハムのからしあえのあえものがそれぞれの器に入っておいてある。
流し台には使ったボールが山のように洗われずに置いてある。
服は制服の上に割烹着、三角巾
 
4人 いったきまぁーす!!(笑顔)
 
4人がいっせいに食べる。
 
4人 ・・・・。(笑顔が引きつる)
   ・・・・まずっ!!
 
それぞれまずい顔をしたり叫んだりする。
 
マミー なんだコレ。
安藤 何て表現したらいいのか分からない
アカちゃん う”−まずいよぉ(涙目)
マミー おかしいな。あたしの予想だったら今頃皆で美味しくいただいちゃってるハズなのに
ユッコ ある意味斬新な味でもあり、未知の味だねっ!
 
アカちゃん あっ!さっそくユッコ評論家だよ
安藤 毎回楽しみだね
アカちゃん ねぇぇーっ
ユッコ (ホイコーローを一口)全体的に脂っこく肉の味付けがうすいながらもお酒の味は強い。アカちゃんにはちょーっと大人すぎに仕上がった料理だね
アカちゃん そんなことないよっ
安藤 ・・・というかお肉の味付けが薄いのは10分付けとかなきゃいけないのをつけるの忘れてて1分にしたからじゃん
ユッコ なおかつ調味料はしょうゆ・酒・こしょう・佐藤・味噌しか入ってないはずなのにすっぱさもあり・・・・・
安藤 あっ!それきっとウチが隠し味入れたからだよ!
アカちゃん 安藤ちゃん何入れたの?(わくわくした顔で)
安藤 レモン!!(自慢気に)
マミー レモン!?
安藤 そう!レモン。もやしとハムのあえものでレモン余ったのがあったでしょ?それにもったいないと思ってちょっとだけ入れてみたんだ。
   あっ、もちろんウチの独断と偏見でね!
マミー 独断と偏見って・・・
ユッコ これは全体の味を10とすると脂っこさ2割、酒2割、肉の味付けの薄さ1割、焦げ1割、すっぱさを4割といったところかな
アカちゃん 4割?でも今安藤ちゃんちょっとだけ(強調)っていったのにそんなにすっぱいの?
マミー ・・・ねぇ。ちょっとだけ(強調)ってどんだけ?
安藤 だ、だからちょっとだけだって
マミー だからどんだけ?
安藤 だから・・・こんぐらい?
マミー 幅で表されてもわかんないよ
アカちゃん わかった!大さじ5くらいでしょ!
安藤 アカちゃん大当たり!
アカちゃん やったぁ!
マミー えっ。何でそれで分かったの?
アカちゃん そんなの女の勘に決まってるじゃん!
マミー アカちゃんにそんな勘が備わってるわけないでしょ
安藤 確かに。だってアカちゃんだもんね
ユッコ あの・・・
アカちゃん もぅ!それって私が子供っぽいってこと?それに私、赤辺愛子って名前なのに皆名前で呼んでくれないしさ。
      アカちゃんって乳児期の赤ちゃんみたいでなんかやだ
安藤 でも今更愛子ってよびづらくない?
マミー うん。もぅアカちゃんってあだ名が定着しちゃってるから逆に愛子って別人みたい
アカちゃん ・・・そっか。じゃあアカちゃんでイィよ。まったく2人ともしょうがないなぁ
 
(安藤とマミーの2人で)
安藤 本当にアカちゃんって赤ちゃんみたいに素直だよね
マミー うんうん
ユッコ あのっ!
安藤 えっ?ユッコどうしたの?
ユッコ まだ評論し終わってないんだけど
マミー は?あ、あぁ・・・いつものユッコ評論会ね
ユッコ そう
アカちゃん じゃあ次の料理、もやしとハムのからしあえを評論しちゃってください!
ユッコ ユッコにおまかせ!(ウインクしようとしたができずに両目をつぶってしまう)
3人 ・・・・・・。
安藤 ユッコってウインクできなかったんだ
アカちゃん 私できるよ!ほらっ!(ウインクを何回もしてみせる)
ユッコ (アカちゃんが何回もウインクしたせいで)私初めてアカちゃんがキモい&憎いと思っちゃった
アカちゃん (じろりとにらむ)
マミー しっ!それは皆が思ったからあえて黙っとこうよ
安藤 あ、ねぇ。そういえばさっき脂っこさ2割、酒・・・何割、なんとか何割っていってたよね?
ユッコ 脂っこさ2割、酒2割、肉の味付けの薄さ1割、焦げ1割、すっぱさを4割のこと?
安藤 あ。それそれ
アカちゃん ん?それがどうかしたの?
安藤 それって他にも脂っこくした人や・・・えっとなんだっけ?
ユッコ 脂っこさ2割、酒2割、肉の味付けの薄さ1割、焦げ1割、すっぱさを4割!
安藤 そう!その原因を起こした人が他にもいるってことじゃない?
マミー まぁもぅすっぱくした原因は誰だかわかってるしね
安藤 ハハハッ・・・
アカちゃん じゃあその犯人は誰かさがそうよ!
ユッコ 要するに油・酒の分量を間違えた人、それから焦がした人は誰かって事?
アカちゃん そういうこと!
安藤 ホイコーローの分量を量った人誰ー?手あげて!
4人 ・・・・・・・(誰も手をあげない)
アカちゃん えっ。誰もいないの?
マミー こわっ!
4人 ん?
アカちゃん え?
ユッコ なに?
安藤 どうした?
マミー あ。それ作ったのあたしだ
安藤 な、なんだ。はかった人いるじゃん
 
4人安心する
 
安藤 って・・・・えー!
マミー 何その反応
安藤 だ、だってあんだけ圧力かけたり嫌味言ってたのにマミーも分量はかり間違えてるじゃんか
マミー まぁそういうことになるね
安藤 そういうことになるねって・・・何それ!おかしいよ
マミー そんなこといったら安藤の方がおかしいって。だって隠し味とか言っておきながら全然隠れてないんだよ?すっぱさが。
    しかもレモンが余ったからって大さじ5も入れるバカがいる?
安藤 うっ。だ、だからって八つ当たり?分量を量り間違えたらまずくなるの当たり前でしょ?!
マミー うーん、まぁ分量を量り間違えたっていうかさ、ぶっちゃけはかってないんだけどね。
安藤 はかってないの?
マミー だって、あたしのお母さん適当に調味料入れてるのにおいしい料理が作れてるから、あたしもそうやってすれば大丈夫だと思ったんだよね
ユッコ それはマミーのお母さんが長年料理をして調味料をどれくらい入れるか分かってるからじゃない?
マミー は?
アカちゃん はいはーい!私のお母さんもいつも料理してるから分量はからなくても作れるよ
安藤 ウチもそうかな
ユッコ みんなそうなんじゃない?けど、そんなに料理してない、特に(強調)私達が作ったら適当ってホントに適当になるよ?
マミー あ・・・・そっか。そりゃそうだよ・・・
安藤 でしょ?マミーしっかりしてよ!
ユッコ ねぇ、分量はかり間違えたところで、焦がした犯人わかった!
アカちゃん えっ!誰?!
ユッコ 私
アカちゃん え、ユッコが焦がしたの?
ユッコ だって私ホイコーロー炒めた覚えあるもん
マミー そう来たか。じゃ・・・決定・・・なんじゃない?
安藤 でも、あっさりと・・・解決しすぎ・・・だよね
アカちゃん うん!自慢げに言わないし自分が何の仕事してたか忘れた人がいたのになんか拍子抜け・・・
マミー&安藤 うぐっ!その言葉・・・痛い
アカちゃん あ!けど何で焦がしちゃったの?
ユッコ それも自分なりに考えて答えが出たんだけど
マミー あ、もう自分で答え出しちゃったんだ
ユッコ うん。多分野菜や肉を混ぜるの忘れてたからだと思う
安藤 そりゃ、常識に考えたらこげるよ
アカちゃん なんで混ぜるの忘れてたの?
ユッコ あ、それも自分で考えてみたんだけど・・・
マミー あ、それも自分で考えちゃったんだ
ユッコ うん。みんなこの前の中間何点だったって話してたでしょ?それに聞き耳をたててたら忘れてたみたい
安藤 聞き耳ってユッコ話に入ってこればよかったのに
ユッコ だってあまりに皆・・・(言おうとしたがやめる)
マミー ねぇ、なんでそこで黙るわけ?
アカちゃん なんか顔を背ける前にちょっとだけ鼻で笑われたような・・・
安藤 ユッコ何が言いたいの?
ユッコ ・・・・・・皆の点数がよろしくないから
マミー 確かに頭良くないけどさ
安藤 ウチも下から数えた方が早いけど
アカちゃん え!下に何人いるの?
安藤 3人くらい
アカちゃん やったぁ!勝った!!私5人だよ
マミー うわっ。2人ともそんな争いしないでよ
アカちゃん だってぇー
ユッコ ほら。3人ともよろしくない
安藤 そういうユッコは何位なの?
ユッコ 98位
アカちゃん それって・・・
安藤 イィの?悪いの?
ユッコ 私らの学科は196人でしょ?だからちょうど中盤
マミー ねぇ、ちょっと・・・みんな食べ終わって片付けてるよ!?
安藤 えぇ?
アカちゃん ホントだぁ。どうしよう・・・コレ
マミー 私は・・・全部食べるよ!
安藤 うそっ。でも、もったいないよね・・・でも・・・
ユッコ 脂っこさ2割、酒2割、肉の味付けの薄さ1割、焦げ1割、すっぱさを4割を?
アカちゃん でも三角コーナーに入れちゃうのもいつものことだし、そろそろ先生に目つけられないかな?
ユッコ 先生の目がこっちを見ている・・・
マミー しょうがない!今日は皆頑張って食べようよ!
安藤 もったいないオバケでるし。よし!
アカちゃん 2人とも食べるの?・・・なら私もがんばってみようかな
ユッコ 頭痛、めまい、腹痛で一週間休むのが目に見えて明らかなのに・・・
アカちゃん じゃあユッコからいってみよ!
マミー&安藤 オー!
ユッコ ちょ、ちょっと!
 
ユッコの口にもやしとハムのからしあえを口いっぱいにつめこむ
 
ユッコ むぐぐっ!・・・・うっ!
アカちゃん はい!ユッコ評論家がめざめた?
安藤 ユッコどう?
ユッコ からっ!からしからっ!
マミー あ、評論家じゃなく普通の人だ
ユッコ ん?もやしとハムのあえものに入ってる野菜ってキャベツだったっけ?
アカちゃん もしかして・・・
安藤 レタスじゃなかったっけ?キャベツはホイコーローだったと思うけど
マミー まって!調べてみればイィじゃん
 
安藤・マミー・ユッコ教科書のもやしとハムのあえもののページを見る
 
安藤 やっぱりもやしとハムのあえものがレタスだよ。ほらっ
 
教科書をユッコに見せる
 
マミー けど、それがどうした? 
ユッコ キャベツが入ってる!
安藤 ん?普通間違う?
マミー 間違わないでしょ
ユッコ うん。
4人 ・・・・・・・・。
 
安藤・マミー・ユッコそらーっとアカちゃんの顔をみる
 
アカちゃん (気まずそうな顔)
ユッコ 犯人はアカちゃんみたい・・・
マミー だね
安藤 決定っぽいね
アカちゃん ごぉめん!だって私キャベツとレタスの違いがわかんないんだもん
マミー 誰かに聞こうよ
アカちゃん 女の勘で何とかなるかなぁって
安藤 ならないから今こんなになってるんでしょう
ユッコ ふぅ。ごちそうさま。とりあえず私は2品ともたべたけど、3人はどうするの
アカちゃん えぇ!ホントだ。もぅなくなってる
マミー いつのまに
安藤 ユッコすごい・・・ね
ユッコ 食べないとは・・・言わないよね(ふくみ笑いで笑ってみる)
3人 (ごくりとつばを飲む)
アカちゃん た、食べようよ!
マミー そうだね
安藤 みんなで食べれば怖くない!だもんね
 
3人ゆーっくり食器をとってためらう。しかしすぐに口にかきいれる
 
ユッコ(にっこり笑み)
3人 (食べきる)・・・まっずぅー!
マミー よくこんなの作れるよ
安藤 毎回毎回なんでこんなの作っちゃうんだろうね。ウチら
アカちゃん 親子どんぶりもミートスパゲティも味噌汁もかぼちゃのスープも漬物も・・・ぜーんぶ失敗だったよね
マミー 特に親子どんぶりはこの世のものとは思えなかった
ユッコ さて。みんな手をあわせて
4人 ・・・ごちそうさまでした
ユッコ あそこにあるのも片付けなきゃね(と流し台にあるボールやザルが山になっているところを指さす)
安藤 忘れてた
マミー あぁーもぅ。とっとと片付けよ。みんな食器拭き始めてるし
 
食器をもって流し台へ。4人で食器を洗ったりふいたりしている。手は動かしながら
 
安藤 あぁーまだホイコーローの後味が残って気持ち悪い
アカちゃん 胸がムカムカするよ
マミー調理実習の後はいつも医薬飲まなきゃいけないんだよね
ユッコ 腹痛の薬もね
アカちゃん う”−こんなんじゃ将来は栄養士になれないかなぁ
安藤 えっ!アカちゃん栄養士になるの?ウチもだよ
マミー ってかあたしもなんだけど!
ユッコ 私も・・・
マミー ユッコは評論家じゃないんだ
ユッコ 評論家は趣味
安藤 結構評論家いいとこまで行くと思うんだけど
マミー ってことは4人とも栄養士になるってこと?
アカちゃん うわぁ。すっごい偶然!じゃあさじゃあさ、みんなはなんで栄養士になりたいの?
ユッコ 私は栄養士になれば味見出来るから
アカちゃん 味見?
ユッコ (うなずく)栄養士になるためにはたくさん料理を練習する必要があるでしょ?授業で料理食べれるなんて夢見たいだから
マミー でも栄養士になったあとは授業ないし献立作るだけだよ
ユッコ えっ・・・
マミー 気付いてなかったんだ・・・
アカちゃん えっと・・・安藤ちゃんは?
安藤 ウチはイィ主婦に名って美味しい献立を考えて夫をおどろかせたりする幸せーな家庭にしたいから
アカちゃん あれ?でも安藤ちゃんって・・・
マミー 男嫌いだよね!
アカちゃん そのためにこの女子高に来たはずじゃなかったっけ?
安藤 うっ・・・
アカちゃん おっ!なんとかなるなる!だよ。安藤ちゃん。じっ、じゃあマミーは?
マミー 私?私は・・・ほらっ。私の親って2人とも太ってるじゃん。
アカちゃん そうなの?何キロ?
マミー 父さんが82キロで母さんが76キロ
アカちゃん ズバリ太りすぎ決定の体重だね!
マミー でしょ?それで私も結構ぽっちゃり型じゃん。だから将来はあぁ言う風になっちゃうのかなと思うと恐ろしくて恐ろしくてさ
アカちゃん おじいちゃんがハゲてるからそろそろお父さんもはえぎわが危ないなという不安と一緒だねっ!
マミー そう!だからカロリー計算できるように栄養士目指してるんだ!
アカちゃん ・・・カロリ計算
マミー そう。カロリー計算!どう、あの2人よりよっぽど栄養士になりたい理由でしょ
アカちゃん カロリ計算の本って本屋に売ってるよ
マミー はっ・・・
安藤&マミー&ユッコ ・・・・・・。(暗い)
アカちゃん あれれ?どうしたの、皆。あ、ちなみに私は、お母さんが給食センターで働いてるからおいしいんだよ。んで、
      私もお母さんみたいにおいしいご飯作りたいなって
ユッコ けどレタスとキャベツの見分けができてない
アカちゃん あっ・・・
4人 ・・・・・・・。(さらに暗くどよーんとなる)
安藤 な、なんかさ。みんな栄養士になれるのかな
ユッコ 料理作ってもまずいし
マミー それは実力が伴ってないだけだって!料理は好きなんだよ
アカちゃん みんなそれは一緒だよ
安藤 それに成績も
マミー 大丈夫だって!まだなんとかなるよ
アカちゃん そぅそ。なんとかなるなる
ユッコ なるハズ・・・
アカちゃん (おもいつく)そうだ!じゃあ次の調理実習で成功したら栄養士目指して、まずかったら違う職業にみんなでなろうよ
マミー なんか安易だなー
ユッコ 将来の夢がこんなに簡単に決まるとは・・・
安藤 次の調理実習の時間が勝負ってことだね。で、次何作るんだっけ?
マミー なんだっけ?
アカちゃん うーんと・・・
ユッコ そば
3人 そばぁ?!
 
チャイムがなる
 
安藤 あっ、授業終わった
マミー まぁ次頑張ればイィんじゃない?
ユッコ 食器も洗い終わって、大も綺麗になったことだし
アカちゃん だねぇ。じゃあ、帰ろう、帰ろう
 
4人割烹着三角巾をとる。椅子を片付ける
 
アカちゃん そば作り成功するとイィねぇ
マミー 私つゆ作る
安藤 ウチ隠し味何入れるか考える!
ユッコ 私そばゆでる
アカちゃん じゃ、私大根するよ
マミー 大根とレタス間違わないでよー
アカちゃん それぐらい分かるもん
 
4人とを閉めてハケる         終わり