コンビニエンス☆ラプソディ
 
秋人  大学2年 コンビニでバイト中
響子  大学1年 秋人と同じコンビニでバイト中
店長  2人のバイト先の店長(年齢不詳)
 
 
日没後、午後6時半〜7時くらいの廃れたコンビニ。秋人はレジ。響子は箒で掃除中。
 
秋人  「・・・(ため息)」
響子  「何?」
秋人  「響子ちゃんさぁ、今月どんくらい入った?」
響子  「んー・・・微妙」
秋人  「俺もイマイチでさー。客来ないし?ここ経営大丈夫なんかね?」
 
・ ・・とか言いながら響子にススーッと近づく。響子さり気にかわす。
 
秋人  「・・・(つぶやき)いいけど」
 
 
響子  「あたしだって、ここのバイト無くなったら困るけど」
秋人  「響子ちゃんアレでしょ?留学資金貯めてんでしょ?」
響子  「そーだけど」
秋人  「凄いよねー。夢は大きいし、輝いてるって感じ?」
響子  「別に。思ってるだけなら凄くないし」
秋人  「そんなことないってー。俺なんかホントなんも考えてないしー」
響子  「・・・・・」
秋人  「てかさー。俺竹内結子好きなんだけどー、どう思うよ?なんで中村獅堂なんかと結婚
しちゃうかね。俺全っ然わかんねーんだけど。大体・・・」
 
言ってる途中で店長登場。その間響子は秋人を無視。
 
店長  「2人ともお疲れ様。今日はもう閉めるから、着替えておいでよ」
秋人  「えっ。閉めるって、まだ7時半スよ!?」
店長  「んー。でもお客さん来ないしねぇ」
秋人  「いや、アンタ稼ぐ気あるんですか!?7時半に閉まるコンビニなんて聞いたこと
し!!」
店長  「いーのいーの。どーせ道楽半分なんだし」
 
響子はそそくさと更衣室に。
 
秋人  「ちょっ、響子ちゃん!?」
 
響子、更衣室(ソデ?)から顔を出し、秋人の着替えや荷物をバサっと落とす。
 
響子  「あたし、着替えてるから、覗かないでよね」
秋人  「・・・・・」
 
残された店長と秋人。
 
秋人  「ねーテンチョー。響子ちゃん何で俺にあんな冷たいんだと思う?」
店長  「(ニコニコしながらズバッと)嫌いなんじゃない?」
秋人  「うあー。マジっすかー。俺結構本気なのにー」
店長  「えっ!秋人くんてば響子ちゃんにフォーリンラブラブ!?」
秋人  「そーですよぉ。でも全然構ってくれなくてぇー。未だにメアドもケー番も教えてくん
ないのー」
 
ちょっと間。
 
店長  「うーん・・・そっかぁ。それじゃぁ、この店潰れちゃったらもう会えなくなっちゃう
ねー」
 
秋人  「そーっスねー。・・・・・って、は!?」
店長  「ん?」
秋人  「テッ、てててててててんちょぉ!!今なんて!?」
店長  「いやー。やっぱりねぇ、ここまで閑古鳥だと、いい加減こっちも危なくってさぁ。ど
ーせ道楽半分なんだから、そろそろやめようかと思ってねぇ」
 
そこに響子が着替えて登場。
 
響子  「・・・え?」
店長  「あ、響子ちゃん聞いてた?ゴメンねぇ、突然。でもコンビニなんて腐るほどあるし、
そっちのほうが給料もいいと思・・・」
響子  「こっ、困ります!!あたし他のところでバイトなんか出来ません!!」
秋人  「どっ、どしたの響子ちゃん」
 
響子  「どうしたら、店、やめなくて済むんですか?」
秋人  「え?」
店長  「どうしたらって、そりゃ、売上伸びたらやめるとは思わないだろうけど・・・」
 
響子  「売上、上げればいいんですね?」
店長  「え、うん、そう・・・だねぇ」
響子  「わかりました」
店&秋 「え?」
響子  「売上、上げましょう」
店&秋 「は!?」
 
響子  「ここの経営、立て直すんですっ!!」
店&秋 「・・・はぃ?」
 
暗転。
 
数日後。同コンビニ。響子が黙々とチラシを作っている。秋人はレジ。
 
 
秋人  「なーなー響子ちゃん。それって効果あんの?」
響子  「無いと思うならやんない」
秋人  「うーん・・・」
 
秋人、響子に近づいて行き、隣に来る。
 
秋人  「響子ちゃんてさぁ。頭いいし、顔も可愛いけど・・・意外と結構不器用?」
響子  「・・・・・・っ」
秋人  「あ、いや別にバカにした訳じゃないんだけど」
響子  「手伝わないんなら、そんなこと言わないでくれる・・・っ?」
秋人  「やー・・・手伝いたいのは山々なんだけどさぁ。俺が思うに、そんな地味な作業で客
来るようになるとは思えないんだよねー」
響子  「じゃぁ、何しろって言うのよ」
秋人  「まずはアレじゃない?自分に足りないところを見つける?とか?そんなんで一時的に
客入れたって根本的な解決にはならないじゃん」
響子  「・・・・・」
秋人  「俺が思うに、まずは名前。立地条件は悪くないんだから、客が流れちゃうのは大手フ
ランチャイズに名前負けしてるからだと思うんだよね」
響子  「・・・・・」
秋人  「んーと、あとは頻繁に商品入れ替えることかなぁ。こういうローカルな店だからこそ、
中身で強くしなきゃダメだね。オリジナルでも作るとかして・・・」
響子  「・・・・・」
秋人  「・・・え、ごめん。俺なんかまずいこと言った?」
響子  「違、なんか・・・凄い、ね。よくそんなん出てくる・・・」
秋人  「ま、バイト歴長いから」
 
響子  「・・・なるほど、ねー」
 
秋人、決意を新たにした感じで。
 
秋人  「・・・よし。響子ちゃん、脱ごう!」
響子  「は!?」
秋人  「そうだよ!響子ちゃんが脱げばいいんだ!!」
響子  「あ・・・の。言ってる意味がわからないんだけど・・・?」
秋人  「だから響子ちゃんが水着になって客引きを!!」
響子  「さっき店の中身がどうたらこうたらって言ってたじゃない!あたしが脱いでどう
す・・・」
店長、ウキウキしながら登場。
 
店長  「何々?何の話してるの?」
秋人  「響子ちゃんが水着になるのデス!!」
響子  「あたし許可してないし!!」
店長  「あー、いんじゃない?(嬉しそう)」
響子  「店長!?」
店長  「やっぱ若い女の子は客取れるしー」
秋人  「てゆーか俺が見たい!!」
響子  「黙れ!!」
秋人  「だって響子ちゃん、ここ潰れちゃったら困るんでしょ?」
店長  「背に腹は変えられぬよ響子ちゃん」
響子  「・・・・・っ」
秋人  「それとも、新しいトコ探す?」
響子  「・・・わかり・・・っましたっ・・・」
秋&店 「え?」
響子  「わかりましたよ、脱げばいいんでしょ!?脱ぎますよ!!」
 
秋人、店長、同時に
 
秋人  「マジで!?(ごっつ嬉しそう)」
店長  「マジで!?(本当に?みたいな)」
響子  「あんまり騒がないで下さい。気が変わりますから」
 
秋人  「よっしゃ来たぁ!これでもう絶対この店安泰だって!!」
店長  「そうだねぇ。あとは、我々も頑張るしかないねぇ」
響子  「・・・あぁもぉ(やっちゃった)・・・」  
座り込む響子。
響子、時計を見て。
響子  「え、あ。あたし今日上がりです」
そして立ち上がるが、よろける。秋人支える。響子、顔色が変わる。
響子  「触んないで!!」
と、すぐさま秋人を振り払う。
 
響子、我に帰って。
響子  「あ・・・」
秋人  「ごっ、ごめん俺何か・・・」
響子  「・・・違うんです。あたしのほうこそ、ごめんなさい」
秋人  「や、いいけど・・・」
響子  「お疲れ様でしたっ!!」
 
響子逃げるように去る。
 
残された店長と秋人。
 
秋人  「・・・・・・」
店長  「・・・・・・うーん。相当重症だねぇ」
秋人  「俺、そんな嫌われてんのかな・・・」
店長  「うーん・・・これ言っちゃってもいいのかなぁ・・・」
秋人  「・・・え?」
店長  「響子ちゃんてさぁ、『男の人』に触られるのが本当に、死ぬほど恐いんだって。この
店以外のとこって、割と男頻度高いみたいなんだよね。こんな田舎じゃ、カフェスタ
ッフなんかも出来やしないし」
秋人  「・・・なんでそんな」
店長  「なんか昔色々あったみたいなんだけどさー。同年代の男には皆あんな感じらしいから、
そんな落ち込まなくてもいいんじゃない」
秋人  「・・・そっか。・・・いや、ちょっと待て!!それでハイそうですかって引き下がれ
ないっすよ!」
店長  「え?」
秋人  「きっと過去の男に酷い目に合わされたんだ・・・そうだ、そうに違いない。もうこれ
は俺があの子の傷を癒してあげるしか無い!!」
店長  「しゅ・・・秋人くん?」
秋人  「可哀想に・・・それでその男を未だに忘れられず、俺にもあんな態度を・・・」
店長  「おーい。しゅーとくーん・・・」
秋人  「店長は黙っててください!そうだ、俺が彼女を救ってあげるんだ!!いや、俺にしか
できない!!」
店長  「・・・しゅーとくーん」
秋人  「こうなったら何が何でも響子ちゃんを振り向かせる!!店長!協力してくれますよ
ね!?」
店長  「へっ!?」
秋人  「何ですかそれー。協力してくんないんですかー?」
店長  「いや、もっ、勿論協力するさぁ!!」
秋人  「そうですよね!!いやぁ、流石店長話がわかるぅ!!」
店長  「秋人くん、何かおかしくない?」
秋人  「いやぁ、もうそんなこと全然無いっすよー」
 
とか言いながら手には酒(店の)。
 
店長  「・・・・秋人くん!!!」
 
間。
 
秋人  「ねーテンチョー。どうしたら響子ちゃん俺んとこ来てくれるかなー」
店長  「もういっそ既成事実でも作っちゃったら?」
秋人、飲んでいた酒をふく。店長、慌ててそれを拭く。
店長  「もー。秋人くん汚いなぁ・・・」
秋人、酔い覚める。
秋人  「俺思うんだけどさー。店長いちばん腹黒いんじゃない?」
店長  「んー?そんなことないよー♪」
 
秋人  「(こいつ絶対面白がってる!みたいな感じで)・・・・よく言う」
 
店長  「それより秋人くんの恋路でしょー?」
秋人  「そうですよ!もし上手いこといったら、ここ潰れちゃっても大丈夫だし!」
店長  「あはははははは。縁起でもないこというなぁ」
 
秋人  「あ。でも、響子ちゃんはここ潰れちゃったら、大変なんだよな」
店長  「ん?」
秋人  「留学資金なんて、そんな簡単にたまるもんじゃないし」
店長  「そうだねぇ。でも、響子ちゃんなら大丈夫なんじゃない?割とすんなりやり遂げそう
だよ?」
秋人  「・・・だと、いいけど」
 
店長  「まぁ、とりあえずはお客さん入るのを待つばかりだね。」
 
暗転。
 
数日後。同コンビニ。3人が深刻そうにお話中。
壁には1日だけ伸びた売上推移表と、グラビア系のポスターもあるといいかも。
 
響子  「・・・・・」
秋人  「うーん・・・」
店長  「やっぱ無理だったかなぁ・・・」
響子  「店長、やっぱり閉めちゃうしかないんですか?」
店長  「うーん・・・」
響子  「やっぱり、無理、ですか」
 
響子、逃げるように走り出す。
 
秋人  「響子ちゃん!?」
 
秋人、響子を追う。残された店長。
 
店長  「(意味ありげにためいき)」
 
 
秋人  「響子ちゃん!」
と言って、響子の腕をつかむ。響子、一瞬顔をゆがめる。
響子  「・・・・ぅ」
秋人  「響子ちゃん」
響子  「だって、あたしどうしたらいいか・・・」
秋人  「大丈夫だって。あの店長割としっかりしてるから、きっと・・・これからなんだよ!!」
響子  「何を根拠に・・・」
秋人  「響子ちゃん」
響子  「あきらめたくないの」
秋人  「・・・うん」
響子  「だから・・・」
秋人  「うん、わかった。だからもっかい頑張ろ?」
響子  「・・・・・(うなづく)」
秋人  「・・・ん、じゃ1回戻ろっか。店長置いてきちゃったし」
 
2人、コンビニに戻る。そこには商品も店長の姿も無い。
 
秋人  「・・・店長?」
響子  「・・・なに、これ」
秋人  「店長!店長!?」
 
2人、店長を探すが、見つからない。響子、レジの隣に置手紙を発見。
 
響子  「・・・これ」
秋人  「え?」
響子  「店長、から」
秋人、受け取って読む。
秋人  「『やっほー秋人くん、響子ちゃん。ごめんねー突然で。いやぁ、こっちもちょっと若
いときの夢が棄てられなくてー。この店やめて、貯蓄で欧州1周ぶらり旅してこよっ
かと思ってー。ほんとごめんねー。そこで新しい自分見つけようと思うんだー。
あ、秋人くん。響子ちゃんのこと宜しくねー。新しいバイトでも永久就職でも何でも
してあげてー。
それじゃぁね、バイバイ。運がよければ、また会おうよ。  店長より。』!?」
 
2人、顔を見合わせる。
 
響子  「・・・・・」
秋人  「あの人一体何考えてんだ」
響子  「ホントに・・・」
秋人  「響子ちゃん、これどうする?手紙にはこう書いてあるけど?」
響子  「・・・・・・」
響子、秋人の裾をつかむ。
秋人  「・・・・・・」
響子  「(俯きながら)携帯、教えて?」
秋人  「・・・・・・喜んで(笑顔)」
 
 
 
                                     完