・大切なものや人を名で呼ばない→呼ぶ、という変化、ただただ待ち続ける、という筋……具体的な道具立てであるかのように見えて、かなり抽象度の高い筆致になっています。すばらしい。ここまで感情、というものを別次元の道具にまで昇華した作品を書ける高校生はそんなにはいません。
・大切なものを待つ、その視線を横から見つめている少女の嫉妬に近い感情、そしてその人が気まぐれに振り向けてくるような好意の表明。読者はふりまわされて胸が引き裂かれそうな感情に持っていかれます。
・この二人が、待つ、帰ってこない、探す――という困難を乗り越えるための行動の結果得たものは、意外な二人の関係の次なる次元への変化だった……という物語が、楽しいです。
・初めに出てきた気味の悪い少年はうまく処理できていませんでしたね。残念。