・ちょっと待って、なにこれ、すばらしい!と鳥肌が立ちました。この走り抜ける風のような、暗喩の切れ味!先生はどうして変な授業、積み木、綾取り……そういうものをするのか?そして卒業式に向かう高校生とはなんなのか……?言葉ではぎりぎり説明しかねる、いや説明したくない、具体と抽象の織り合わせ。この作品の技巧の切れ味は,「ああ、ここにも実力ある書き手が隠れていた」というものです。感動しました。素直にお伝えするのが礼儀だと思いました。
・繰り返しだ、ただただ人生はくり返しだ……と嘆いてみせるわりには作者は人生を高校の卒業になぞらえるなど、てれた具合でこの人生を愛し、味わっているように思える。この微妙な按配が快い。
・おそろしいのはこの作者の人生への呪いが見え隠れする点。電車の中で再会する昔の卒業生同士の会話の苦さは、定型を超えている。
・高校生による上演の演劇台本、というものではない。大人の視点に立った「人生」なるものへの強い断念と、死への諦念。生徒から生への希望をそぐほどの力、魔力を発揮しかねない。表現とはどうしてもそういう負の力を含みもつ。その藤塚の気配と香りのよい切れとの共存を味わいたくて、人は劇場に迷い込む……恐ろしい作品です。
・上演してOMS,戯曲賞へ、あるいは上演せずにAAF戯曲賞へ、あるいは日本劇作家協会新人戯曲賞へ出してほしい、と素直にお勧めします。
・ウチワねた(福井高校演劇顧問の中での)さえ除いていい、立派な作品です!
・ウチワねたには、だけど泣きました。うれしくて。
・タイトルが35年ぶりくらいに見るすてきさ。